【ファンケル×キリン】“白麹菌※1”に含まれる「14-DHE」が糖化ダメージを抑制する機能を発見

ファンケルは、キリンホールディングスとの共同研究で、キリンが保有する“白麹菌※1に含まれる「14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)」が美肌機能に関わる酵素アルギナーゼ 1※2」を増加させること、また白麹菌の抽出物を配合した美容液の連続使用で肌老化兆候が改善することを発表してきました。

そして今回、これまで確認してきた「14-DHE」の美肌機能について、さらに詳細なメカニズム解明を進めた結果、「14-DHE」がアルギナーゼ 1を増やし、糖化ダメージを抑制するとともに、老化を促進するシグナルを抑制することでアンチエイジングに導くことを見出しました※3

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「14-DHE」が、糖化タンパク質が結合する「RAGE」を減らし、糖化ダメージを低減

研究の背景としては、キリンは、キリンが保有する「白麹菌(Aspergillus kawachii)」 に含まれるステロール類※4の「14-DHE」に、 経口摂取で高い肌質の改善効果があることを確認しています。

さらに、どのように肌に働くかというメカニズムを解明するため、皮膚への効果を視野に入れ、ファンケルと共同研究を始めたものになります。

ファンケルは、従来から皮膚表面に多く存在する「アルギナーゼ 1」が、角層の保湿機能や肌の酸化、糖化の制御に関わり、肌の明るさやシワなど美肌に導く重要なタンパクであることを確認しています。(図 1、2)。

このタンパクに着目し、「14-DHE」を評価しました。

「14-DHE」が、美肌機能に関わるタンパク「アルギナーゼ 1」の活性を高めることを発発見した際に行った実験では、白麹菌の菌体抽出物から精製された「14-DHE」を、培養したヒト表皮角化細胞に添加し、「アルギナーゼ 1」 の酵素活性を測定。その結果、「14-DHE」を添加していない細胞のコントロールと比較して「14-DHE」 を添加した細胞は、「アルギナーゼ 1」の高い活性を確認しました。これにより、「14-DHE」が美肌タンパクの「アルギナーゼ 1」を活性化させる働きがあることが判明されたのです。

「14-DHE」は「RAGE※5」を減らし糖化ダメージを軽減

体内のタンパク質と糖が結合した糖化タンパク質「AGE※6」は、加齢とともに増加します。

この「AGE」が細胞の表面にある糖化タンパク質受容体「RAGE」に付着することで、細胞の糖化を加速させてダメージを引き起こし、老化を促進させるため、今回、抗糖化機能のあるアルギナーゼ1を増やす「14-DHE」「AGE」「RAGE」にどのような影響があるか確認しました。

培養表皮細胞に「14-DHE」を添加して、「RAGE」の発現量を測定。その結果、「14-DHE」は、「RAGE」を減少させることが確認されました(図1)。

次に、細胞の糖化ダメージに対する「14-DHE」の効果を確認。培養表皮細胞に「AGE」と「14-DHE」をそれぞれ添加した結果、「AGE」により細胞内の糖化ダメージは高くなるが、「14-DHE」を添加することで「AGE」の糖化ダメージを抑制することが確認された(図2)。

「14-DHE」は老化シグナルの「pp53※7」を減らしシミや皮膚炎症・老化を制御

酸化や紫外線などのストレスによる細胞の老化は、DNAダメージにより老化促進因子である「老化シグナル」が活性化することで起こります。

また、アルギナーゼ1は、老化シグナルの「pp53」を減らすことにより、シミや皮膚炎症・老化を制御することが確認されています。

そこで、「14-DHE」の老化シグナルへの影響を確認するため、培養表皮細胞に「14-DHE」を添加し、老化シグナル「pp53」の発現量と細胞内エネルギー産生※8を測定しました。

以上の研究結果により、「14-DHE」の美肌機能メカニズムは、美肌に関わる酵素である「アルギナーゼ1」を増やすことで糖化による細胞へのダメージを低下させ、老化促進因子である老化シグナルの「pp53」を減らして細胞を活性化することで、肌の老化を抑制すると考えられるのです(図5)。

今後の展望

今回、「14-DHE」 が美肌に関わる酵素である「アルギナーゼ1」を増やし、糖化ダメージや老化シグナルの「pp53」を減らすことで、老化抑制につながることを確認できました。

ファンケルとキリンは、「14-DHE」の多能なアンチエイジング機能を応用し、加齢や乱れた食生活で増加する糖化による老化リスクの低減を目的とした製品開発に期待できるとしています。

※1白麹菌とは、黒麹菌株から突然変異株として分離され、胞子の色が白黄色であることから白麹菌(Aspergillus kawachii) と呼ばれている。黒麹菌と同様に焼酎を造る際に使用されている。

※2アルギナーゼ1:タンパク質の一種で活性酸素の発生を抑え、シミを防ぐ力がある酵素。肌表面に多く局在する。身体の炎症時に増加し、正常化させる機能を持つ。ファンケルの長年の研究により、紫外線による皮膚の赤み増加を抑制、メラニン刺激因子やコラーゲン分解酵素を抑制、酸化によるバリア機能の低下や炎症の拡大を抑制、そして糖化物による メージや老化抑制、の四つの働きについて解明している。

※3 研究の一部は第20回日本抗加齢医学会総会(2020年9月25日から27日/WEB開催)にて発表されている。

※4 ステロール骨格を持つ化学物質の総称で、植物由来はフィトステロール、動物由来はコレステロールと呼ばれる。生物にとって細胞膜を構成したり、生体内で情報伝達をするなどの生理機能にとって重要な働きをもつ物質。

※5 「Receptor for AGE(AGEs受容体)。細胞の表面にあるタンパクで、AGEsが付くと炎症や老化を引き起こす指令を出す。

※6 身体の中でタンパク質と余分な糖が結びつく反応を糖化といい、その結果タンパク質が変性・劣化して「Advanced Glycation End Products(AGE)」という名の老化物質を生成する。

※7 「pp53」はさまざまなストレスによってDNAの損傷が生じると増加するタンパク質の一種。細胞老化を制御していることが知られており、このタンパクの量の増加は、細胞老化の目安とされる。その結果、「14-DHE」によって老化シグナル「pp53」は低下するとともに(図3)、表皮細胞のエネルギー産生が増加して細胞が活性化していることを確認した(図4)。

※8 細胞のエネルギー産生は、細胞内小器官の一つであるミトコンドリアで行われており、エネルギーを媒介するアデノシン三リン酸(ATP)を産生している。この活性が弱くなると新陳代謝が落ちて老化が進む。

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