
株式会社コーセー(以下、コーセー)は、東京工業大学 渡辺義浩研究室との共同研究により開発した、プロジェクションマッピングを用いて実際にメイクをしているような MR(Mixed Reality、複合現実)体験ができるメイクシミュレーション技術を、9 月4日~7 日にスペイン・バルセロナで開催された国際的な化粧品技術の研究発表会「第 33 回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)
学術大会」にて発表しました。
この発表は口頭発表応用部門におけるトップ 10 に選出されました。
IFSCCについて
IFSCC (The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists)は、1959 年、当時8カ国の化粧品技術者会の参加により結成された組織で、世界中の化粧品技術者たちによる、より高機能で安全な化粧品技術の開発へ向けて取り組むものになります
現在は81の国と地域を代表する51の団体の会員から構成され、偶数年に開催されてきた「IFSCC Congress」には、数百報の研究発表がなされ、化粧品や肌などに関する世界で最も権威のある研究発表の場となっています。
発表概要
・タイトル:
プロジェクションマッピング技術による3D デジタルメイクアップシステムで美しさを再発見する
ーRediscovering your own beauty through a highly realistic 3D digital makeup system based on projection mapping technology
・発表者:
コーセー研究所 メイク製品研究室 鶴見(石附いしづき)奈央氏

プロジェクションマッピングでより“リアル”なメイクシュミレーターを目指す
コーセーによれば、ファッションやトレンドの変化にともなって、どのメイクが自分に似合うのかを判断するには自分の顔で試すことが重要であるとしています。
これまでにもスマートフォンやタブレット上で動作するAR(拡張現実)メイクシミュレーターは存在しています。
しかしよりリアルなメイク体験から納得できるアイテムの選択をするため、コーセーの研究ではプロジェクションマッピングを用いることで実際に自分の顔上にメイクを瞬時に投影できる、MR(複合現実)メイクの実現に成功しています。
まず、実際の顔では目や口など、表情による動きが大きい部分へのメイク投影を自然に行う必要があるため、プロジェクションマッピングの高速追従技術を有する東京工業大学 渡辺義浩研究室との共同研究を実施しました。
この技術をメイクシミュレーター用に最適化することで、ヒトがずれを感じると言われる 6 ms(msは1,000分の1秒)以内に投影画像を切り替え、自由な顔の動きに追従させることができる機能を実現させました(図1)。

さらに、どのような肌の色でも、実際のメイク時の色合いとずれが生じないように、投影した色と肌に反射して目に見える色と
の関係を分析し、独自の色補正モデルを開発。
この色補正を適用することで、実際のメイクと見分けがつかないほどの精度を得ることに成功しました(図2)。
これらの技術を組み合わせたMRメイクシミュレーターを一般のメイクユーザーが体験し、既存のARメイクシミュレーターと比較したところ、リアルさ、自然さ、商品カウンセリングにおける好ましさの点で優れた評価を獲得。また、このシミュレーターでは数秒間でいくつものメイクを試すことができることから、新しい自己表現の可能性を感じたという評価も多く、自分ならでは美しさを再発見する機会にも繋がると考えられます。

今後の展望
今回コーセーと東京工業大学 渡辺義浩研究室との共同研究により開発したMR メイクシミュレーション技術は、年齢や性別、これまでのメイク経験を問わず、どんな人にもメイクを試す機会を提供することが可能となっています。
これにより、これまで気付かなかった自分ならでは美しさを再発見し、メイクや自己表現の楽しさを拡げることができるとコーセーは考えています。
この技術は 2022年8 月からコンセプトストア Maison KOSÉ 銀座にてビューティアトラクションとして展開しているメイクシミュレーター「COLOR MACHINE」に応用されており、今後も商品カウンセリングに活用やさまざまな活動への応用にも繋げていきたいとしています。