
資生堂は株式会社ツムラ(以下、ツムラ)との共同研究により、東洋医学の考え方から着想を得て、肌不調を引き起こす心身の根本原因を 5 つ導き出し、それらを改善することが期待できる和漢成分の組み合わせを見出しました。
この和漢成分を個々人の心身の状態に合わせて摂取することで、心身の状態の改善とともに肌状態の改善を示すことを確認し、和漢成分が肌改善効果を有することを明らかにし、さらにコラーゲン産生促進効果が確認されている当社独自配合の果実由来成分(リンゴンベリー果汁とアムラ果実)※1と組み合わせることで、さらなる肌改善効果が得られることを確認。
研究の一部は、今年9月に開催された日本生薬学会第 69 回年会にてツムラと共同で発表しました。
※1 美容特許成分 特許第 4917180 号:リンゴンベリーとアムラ果実など配合成分の組合せによる美容についての特許
研究背景
近年、地球環境や社会課題の変化の中、「心身的豊かさ」を求める人が増えており、身体の内側から美しくなろうとするインナービューティーへの意識の高まりとともに、ビューティーとウェルネスの融合が進んでいます。
これまで、和漢成分が心身の不調を整えるために有用であることは知られていますが、それによる肌への影響や作用メカニズムについては詳しくわかっていませんでした。
そこで今回、心身を介して肌を改善できる革新的な技術を開発すべく、創業130 年の歴史を持つツムラと共同研究を実施し、資生堂の持つ肌と心身との関わりに関する知見・技術と、ツムラが持つ心身と生薬のつながりに関する知見を融合することで、肌・身体・心のつながりを広い視点で包括的にとらえ研究を進めました。
和漢成分の組み合わせ探索
今回、個々人の体質によって異なるであろう、肌不調を引き起こす心身の根本原因を、東洋医学の考えをもとに5つ想定。
また、これらの原因を改善することが期待できる成分として、原因ごとに、複数の和漢成分の組み合わせが考案されました。
たとえば、肌不調の根本原因の1つとして想定した「血流・神経炎症」に対しては、古くから冷え・心の不調への効果などが言われてきた「乾姜、大棗」を中心とした和漢成分の組み合わせにたどり着きました。

※2 心身の健やかさを維持・促進する5つの機能は、互いに支え合い、バランスを取っている。
そのため、1つの特定の症状を緩和するだけではなく、その裏側にある生活者の背景にも着目することで体の不調を整えるという考え方。
和漢成分・果実由来成分との併用による心身を介した肌改善効果の確認
心身を介して肌状態を改善すると期待し考案した和漢成分の効果について、体調と肌への影響をヒトで確認※3。
プラセボ群、上記和漢成分群に加え、資生堂がコラーゲン産生促進効果を確認している果実由来成分(リンゴンベリーとアムラ果実)の組み合わせ※1と併用した群の3グループで比較を行ったところ、体調の評価において、和漢成分群と併用群は、プラセボ群に対して、血のめぐりやメンタル不調とも関連する「冷え」、「集中力の欠如」の感じ方が改善することが確認されました(図1)。
また肌状態の評価においては、和漢成分群は、プラセボ群に対して、皮膚粘弾性や角層水分量などの肌状態が改善しており、和漢成分が肌改善効果を有することが明らかになりました(図2)。
さらに、併用群では、和漢成分群よりも高い改善効果を示したことから、果実由来成分を組み合わせることで改善効果がさらに高まることが解りました。


※3 血のめぐりやメンタル面などの体調と肌の不調を感じている 35~50 歳の日本人女性を対象として、プラセボ群 30 名、和漢成分群 30、併用群(和漢成分+果実由来成分)33 名で実施。体調はアンケート、肌(頬)は機器測定により評価
GPCR 解析により和漢素材の働きを解明
Gタンパク質共役型受容体(GPCR) は、ペプチド、タンパク質からイオン、アミン、脂質まで様々な物質を認識する受容体で、ヒトの生理機能に不可欠であることが明らかになっています。
今回、選定した和漢成分の心身、肌への働きを推定するため、計200 種もの GPCR に対する活性を網羅的に解析。
その結果、多くのGPCR に活性を有することが明らかとなり、さらに和漢成分が活性を示した GPCR の機能を調べると、その多くが血管や中枢神経の制御に関連するものであることがわかりました。
これにより、今回確認された和漢成分の肌への効果が、血流や神経への働きを通してもたらされたものであると、強く示唆されました。
今後の展望
資生堂は、肌・身体・心のつながりに着目し、従来の化粧品によるケアだけではなく、食品、運動、睡眠など心身に働きかけるさまざまなケアを提案しています。
今回の研究成果を得て資生堂は、自分らしい健やかな美しさを目指すお客さまに向けて、今後インナービューティー領域の新たな商品・サービスの開発へ応用するとしています。