資生堂、唯一無二の価値を生み出すR&D理念「DYNAMIC HARMONY」制定

紫外線対策やたるみの構造解明とセカンドスキンによる補正&スキンケア効果発表

資生堂は2021年11月17日、オンラインとオフラインでR&D戦略発表会を開催し、研究開発(R&D)の強化を目的に新たに制定した、独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」を説明するとともに、最近の研究成果について担当したスタッフが紹介した。

同社は、今後、新しい理念のもとで5つの研究アプローチを柱に社内外に強みと独自性を可視化していく。これにより、多様なバックグラウンドを持つ世界中の研究員が能力を最大限発揮し、R&D部門をさらに強化してイノベーションの創出を加速。企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」のもと、新たな製品やよりよいサービスを提供していく。

30年にスキンビューティー領域で世界No.1に

2億人の人生に寄り添い、幸福実感する機会の提供を

発表会の冒頭、チーフブランドイノベーションオフィサーの岡部義昭氏が、「DYNAMIC HARMONY」の制定に至るR&Dの戦略や展望などについて説明した。

生活者の間で健康や未病に対する関心が高まり、化粧品業界では、機能性を重視したスキンケアやサンケアにおいて、よりサイエンスにもとづいた裏づけが重視されている。また、クリーン、ナチュラルといった新しい分野への対応が求められるなか、美容機器や美容医療、食品、睡眠など体の内側に働きかけるインナービューティー市場の拡大が予測されている。

さらに、デジタルの発展にともない、Eコマースの拡大とともに、データの分析にもとづくマーケティングや、生活者一人ひとりの嗜好に合わせたアプローチの重要性が高まった。資生堂にとって、デジタル領域でのイノベーションは必要不可欠として、これまでの実績や現在取り組んでいることなどを踏まえた、中長期戦略「win2023and beyond」を策定。

同戦略の中で、2030年にはスキンビューティー領域における世界No.1を目指し、成長路線から収益重視の経営に切り替えていくと発表。本年2021年は、その準備の年と位置づけた。また、創業150周年を迎える22年に再び成長軌道に乗って、最終年度の23年には完全復活を実現。スキンビューティーカンパニーとして売上1兆円程度、営業利益率15%を目指す。

同時に、イノベーションだけではなく、ブランドやDX、サプライチェーン、さらに人材にも継続的に積極的な投資を実行。企業理念「BEAUTY INNOVATION FOR A BETTER WORLD」に沿って、美の力でサステナブルな世界を実現し、スキンビューティー領域を中核に世界で2億人の人生に寄り添い、幸福を実感できる機会を提供することを30年のゴールとして設定している。

目標の実現に向け、東洋思想をベースにビューティーウェルネスカンパニーというコンセプトを掲げ、スキンビューティーとインナービューティーを融合。顧客の生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現するパートナーを目指すとした。資生堂グループ全体のなかでR&Dは重要な部門であり、より生活者に付加価値を与える商品やサービスを提供していくと発表した。

抗老化や紫外線対策などカテゴリー・市場創造

R&D理念はInside/Outside など5項目を柱に

資生堂のR&Dの歴史は、1916年の試験室からスタートした。安心と安全を第一義としながら肌をすこやかに若々しく保ち、美しく彩るためのビューティーケアで、すべての土台となる「皮膚科学」「マテリアルサイエンス」「感性研究」を強みとして、アンチエイジングや紫外線対策、美白など常に新しいカテゴリーや市場を世のなかに送り出してきた。

イノベーションを加速するため、15年以降はR&Dへの投資を増やし、20年までの中期計画「VISION2020」の早期達成に大きく貢献した。今後も、R&D分野には対売上比3%程度の費用を継続して投資していく。

現在のR&D戦略は、スキンケア関連カテゴリーを盤石にすることを核として、新たな領域となる食品などのインナービューティーカテゴリーにチャレンジしている。この2つのカテゴリーを支えていくため、研究のアプローチとして、基盤研究を7つに分類。

不変の肌悩みへの追究や、Game Chargeと言われる新しいものをつくっていくこと、新領域への挑戦などを設定しているが、基礎研究を一層強化することが重要であり、原点に帰って中長期でのイノベーションを続けていくことがR&D戦略の骨子となる。

以上をふまえて制定した、独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」は、現在、以下の5項目を柱としている。

  • ①Inside/Outside「肌の内/外」 
  • ②Functionality/Japan Quality「機能性/日本品質」 期
  • ③Science/Creativity「科学/感性」 
  • ④Premium/Sustainability「プレミアム/サステナビリティ」
  • ⑤Individual/Universal「個/普遍」 

この後、最近のR&Dにおける3種の成果事例の概要が、それぞれ開発に携わった研究スタッフから発表された。

紫外線が肌に良い可視光へと変換して美へ導く

藻類由来エキスと蛍光酸化亜鉛で変換する技術

同社は、肌に悪影響をおよぼすとされてきた紫外線が肌に良い作用をもたらす可視光(美肌光)へと変換し、逃れるだけではなく、環境と共生しながら美へ導く革新的な技術を開発した。

太陽光を恵みととらえる“光合成”に着想を得て、藻類由来のSpirulinaエキスと天然鉱物由来の蛍光酸化亜鉛に効率よく紫外線を可視光(美肌光)に変換する効果を見出し、紫外線による肌ダメージを回復させるとともにコラーゲンやヒアルロン酸の産生を高めることに成功。

この技術を応用し、太陽光のもとでより一層アクティブで自由に日々の生活を楽しむ未来を目指す。研究成果の一部は「第31回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)横浜大会2020」で発表した。この研究は、Premium/Sustainabilityのアプローチで進行し、従来の化粧品ではできなかった紫外線を美肌光へ変換する革新技術により環境との共生を実現。新たな価値を持つ製品やサービスの提供を目指し研究を進める。
  

皮膚解析技術でシワやたるみの根源的原因解明

江連フェローがIFSCC本大会4回連続最優秀賞

また、資生堂は、国際医療福祉大学医学部形成外科学の松﨑恭一主任教授と自治医科大学、生理学研究所との共同研究により、革新的な皮膚解析技術、「4DデジタルスキンTM」を開発した。

皮膚が変形する過程を、内部構造まで超高精細にコンピューター上に再現する新技術で、皮膚の変形で起きるシワやたるみの根源的な原因を解明し、対応手段の開発を飛躍的に進めることができる。研究成果の一部はIFSCC横浜大会で最優秀賞を受賞した。発表者の江連智暢フェローは、IFSCC本大会で4回連続最優秀賞受賞を成し遂げた。

この研究は、Inside/Outsideのアプローチで進め、皮膚で起きる生命現象に、Inside (本技術)とOutside (独自の顔形状解析技術)から迫るアプローチという異なる観点の融合により、顔の老化に関する革新的な価値を創出している。

Second Skinで頬のたるみの即時形状補正効果

メイクアップ効果に加えスキンケア効果創出

同社は、18年に皮膚科学の世界的権威である米マサチューセッツ工科大学のRobert Langer博士らによって創設されたベンチャー企業Olivo Laboratoriesより取得した「Second Skin」技術をさらに進化させ、従来の化粧品の枠を超えたビューティーケアの可能性を見出すことに成功した。

すでに、「Second Skin」技術による「目袋の即時形状補正効果」を商品化しているが、新たに「頬のたるみ(ほうれい線・マリオネットライン)の即時形状補正効果」を実現したことに加え、「連用によるたるみ・シワ改善効果」「薬剤浸透促進効果」など、メイクアップ効果に留まらない価値を創出した。本研究成果の一部は10月28日のIFSCCカンクン(メキシコ)中間大会2021で発表された。

資生堂は今後もFunctionality/ Japan Qualityというアプローチで研究を進め、圧倒的な効果と手軽な使いやすさを両立していく。今後も肌悩みの即時カバー機能や、紫外線防御機能、使用部位の拡大など、新たな価値の追求を続けていくとした。

◎宇宙探査におけるストレス評価の研究を開始

ロシア科学アカデミーと米航空宇宙局と共同で

その他、資生堂はロシア・モスクワにあるロシア科学アカデミー生物医学問題研究所(以下、IBMP RAS)と共同研究契約を締結。IBMP RASが米航空宇宙局Human Research Program (HRP NASA)と共同で2017年11月から進めている国際研究計画「SIRIUS」プロジェクトに参画し、「顔の表情対称性や動きのリモート計測によるストレス評価に関する研究」を産業医とともに実施する。

同プロジェクトは、月や火星への有人宇宙探査に向け、長期間の閉鎖環境における生活が宇宙飛行士の心身におよぼす影響を調査する。21年11月からの8カ月で閉鎖環境における試験は「DYNAMIC HARMONY」のInside/Outsideというアプローチで進める。これにより、ストレスが肌や体に与える影響を解明し、心身をトータルでケアできるスキンビューティー領域における価値開発を目指す。同時に、非接触・遠隔条件下のストレス評価手法へも発展させていく。


同社は16~17年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の閉鎖環境試験に参画し、2週間の閉鎖環境滞在での皮膚・唾液ホルモン・表情対称性などへの影響を見出している。今回は、プロジェクトの閉鎖環境滞在試験へ応募した研究テーマが20年10月に採択された。プロジェクトには世界10ヵ国以上の宇宙開発研究機関や大学などから約70の研究テーマの採択が決定し、日本からは同社と筑波大学からの2つの研究テーマが採択されている。

FASHION EDGE
美になる、ワクワクを。
「FASHION EDGE」は、美容や化粧品の新製品情報や使用感および業界ニュース、美容室情報などを、広くお届けするWEBメディアです。
弊社誌面「Beauty Business」「CATs」「TOKYO FASHION EDGE」および「PROFESSIONAL TOKYO」のご購読は、TOPページの「刊行物/Magazine」からお願いします。
シェアお願いします!