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マンハッタンのドーバーストリート・マーケットとファッションの「瞬間性」

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ファッションエッジ編集部 NY特派員が、NYのファッション事情を中心に現地のカルチャーをご紹介。

第一回は、日本を代表するデザイナーである川久保玲が手掛けるセレクトショップ、マンハッタンに位置する「ドーバーストリートマーケット」について。

マンハッタンのドーバーストリート・マーケットとファッションの「瞬間性」

「コム・デ・ギャルソン」創始者の川久保玲がディレクションを手がけたコンセプト・ショップ、ドーバーストリートマーケット

日本では銀座に旗艦店がありますが、ここマンハッタンのドーバーストリート・マーケットがあるのは、ファッショナブルなソーホーでもミートパッキングでも、最近開発が進むハドソン川沿いでもありません。ミッドタウン地区の、“普通のショップ”が立ち並ぶ地域に、まるで隠れ家のように佇んでいます。

建物の外観は、上の写真の通り。ミッドタウンのレキシントン街に面していて、しかも写真のような表札。まるで図書館か、お役所のようですね。

ところが、ドアを開けると、中はおとぎの国ようにファッションとアートが融合した世界が展開されています。そんな意外性も川久保玲による、お見通しな仕掛けなのかもしれません。

マンハッタンのドーバーストリートマーケットは2013年、銀座店の1年後にオープン。大体四半期ごとのペースで、ショップ内ブランドも、取り扱っている品自体もガラッと変わることが特徴。

マンハッタンでは2018年にミートパッキング地区にオープンした「ディス・イズ・ストーリー」という、四半期ごとにコンセプトを変えるという実験的小売り店舗が話題になりました。しかし、川久保玲は、既にこの形態を2013年に実践していました。さすが未来を見るデザイナーとしてのセンスは別格だと思います。

もちろん彼女のブランドである「コム・デ・ギャルソン」も出店しています。床はコンクリート打ちっぱなしの粗い感じ。マネキンは躍動感あるポーズで、今にも飛び降りてきそうですね。

ちなみにコム・デ・ギャルソンというブランドが生まれたのは1969年、会社としてのスタートは1973年。また、コム・デ・ギャルソンとはフランス語で直訳すると“少年のように”という意味になるが、川久保玲が表現したかったのは、“少年の持つ冒険心”とのこと。

そういった少年の抱いている“冒険心”を、こういったディテールに加えているのでしょうか。

川久保玲は、1986年にファッション・グループのインターナショナル賞を受賞、2000年にはハーバード大学からも優秀デザイン賞を受賞しています。2017年には、メトロポリタン美術館でその作品が展示されたが、これは生存中のデザイナーとしては、イブ・サンローランに次いで2人目という快挙でした。

彼女はコレクション登場の時にもサングラスで表情がわかりにくく、インタビューにもほとんど応じないらしいので、とてもミステリアスな印象。ただ数少ないメディアとのやりとりのなかに、“自分にとっては作品が全てで、作品を見てくれればわかります”という文章がありました。

彼女にとっては、インタビューでわざわざ解説しなくても、作品がメッセージそのものだということ。服単体のみならず、彼女の構築する世界観もまた作品であり、外観と内装、マネキンの躍動感。そういったコントラストも実に興味深い点。

マンハッタンのドーバーストリート・マーケットにはコム・デ・ギャルソン以外の、世界中からのデザイナーの服ももちろん置かれています。中には、写真のような非売品(NON-SALE)も、幾つか陳列されています。

マンハッタンのドーバーストリート・マーケットは7階建てで、この時期、グッチやロエベ、ゴルチエにリック・オーエンス、プラダといった世界的に著名なブランドばかりでなく、新進気鋭のブランドの取り扱いも多いことが印象的でした。

アメリカの若者大人気ブランドであり、ストリートブームを牽引したシュプリームも、ソーホー・フラグ以外でこれだけ品揃えしているのは、ここドーバーストリート・マーケットだけ。だからこそ、四半期ごとに品揃えが一掃する折には、長蛇の列ができてしまいます。

シュプリームの場合、全ての品が限定品なので、特に注目されるアイテムは、発売と同時に売り切れてしまうことが頻繁にあります。元々のTシャツの価格が80ドルだったとしても、売り切れてしまうと、イーベイなどのオンライン・オークションのサイトで倍の価格まで値上げされて売れることも少なくありません。

スニーカー同様、若者たちは新発売の列に並んで購入した後、二次流通で小遣い稼ぎをしているようです。こういった“カルチャー”は、日本と同様といえます。

    

ドーバーストリート・マーケットはファッションだけでなく、アートとの融合も目指しているショップ。そのため、所々に写真のようにアーティスティックなディスプレイも意識されています。こういった“オブジェ”が、平常的な世界観に落とし込まれている点も、川久保玲のショップたる所以。

アートとファッションについての、川久保玲の言葉があります。“ファッションとは、あなたが自分自身に取り付けた何かであり、そしてファッションが生まれた意味との対話を通じて、あなたが身につけた何かです。着ることなしにファッションは意味を持ちません。この点が芸術と違うところです”と。

また彼女は“人が今、買いたいと望むからファッションなのであり、今、今日、身につけたいと思うからファッションなのです。ファッションはこの瞬間だけのものです。”ともいっています。

彼女の言葉には、何時までも聞いていたくなる強いメッセージ性があって、それがコム・デ・ギャルソンの服人気に繋がっているのだと思います。

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この記事を書いた人

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