DXとの共生が軌道に乗り始めた店舗と生活者の新しいステージが開く
本来、暦のうえでは、「晩春・春の終わり」の5月ですが、最近では、もはや「春」ではなく、「初夏・夏のはじまり」という認識が定着してきたのではないでしょうか。年々、平均気温が上昇しているうえ、出足から大型連休となれば、「もう、夏だ」。年末年始に続いて、4月下旬現在、4月末5月始における大型連休期間の交通機関は、前年比2倍近い予約状況になっているそうです。
「がまん」という気体を溜めに溜めて充満させていた口を解放したとたんに、すさまじい勢いでどこへ飛んで行ってしまったのかわからなくなった風船のように、気体の替わりに人々が飛び出していくイメージが浮かびます。彼らの行く先は、人っ子一人いない離れ小島ではありません。むしろ、「一人になれるところ」は避けて、あえて、「みんなが行くところ」に出かけて行くもの。
こうした現象は、何もコロナのせいばかりではありません。元来、動物には、サルなどのように、一族郎党の集団、砕けて言えば“縄張り”に固執するグループと、渡り鳥や野牛、青魚などのように、いつでもどこでも無制限な集団行動を好むグループが存在します。
人間、とりわけ日本人などは、一部を除いて、断然、後者に属すると思われる。論より証拠、銀座や原宿、鎌倉に江ノ島、京都といった超有名な観光地から、風光明媚な地方の過疎地まで、渡り鳥のような大群から小規模だが複数の人間による波が寄せては帰す光景を鑑賞することができます。
これだけ通信網が発達し、起きてから寝るまでSNSでコミュニケーションを取っていながら、なぜ、人々はそれで満足せずに、わざわざ他人と接触し、ときには“三密”になるにも関わらず、集団で街に出かけたがるのだろうのでしょうか。
人々はスマホを胸に“三密”の人気スポットをめざす
ある専門店経営者によると、22年に入って、客数が戻りつつあるそうです。しかも、新規客数はコロナ前を超えているとのこと。また、顧客の場合、一部、タッチアップなどの体験メニューにはまだ抵抗を示すお客もいらっしゃいますが、ほぼ以前のレベルで実施されるようになってきたといいます。
新規客が来店するきっかけとしては、ネット上でのヴァーチャル体験はもとより、依然として駅や商店街などに掲示される“リアル”な販促物を目にして・・・というケースも少なくないと聞きます。
やはり、スマホの存在は大きいものの、まだまだ「実際に街や店舗に出かけて他人と接点をつくり、対面により美容満足度を高めたい」という意識が植え付けられているのでしょう。
世の中はDXの流れが進む一方ですが、その流れに逆行せず、流れに乗りながら、対義語と位置づけられるアナログの極致ともいうべき人間同士の「接点を求める習性」が失われることもありません。
どのようにデジタルカウンセリングが浸透しても、原宿が、渋谷が、新宿が、人であふれかえっている限り、まだまだリアルでのカウンセリングが廃れることはないと、今このときも店頭で対峙しているお客の後ろ姿が語っているように思えます。