
ブランドメッセージ『I HOPE.』を掲げ、アジアを起点とし世界中の人々に“希望”という感情価値を届けるKANEBO。
2025年9月にタイ・バンコクで開催された大規模イベントでは、そのメッセージが五感で感じられる空間を企画し、大成功を収めました。
今回お話を伺ったのは、花王株式会社 化粧品事業部門 プレステージブランドビジネスグループ KANEBO シニアマーケターの古後多枝子さん。
ブランドを現場で育て、文化や価値観の違いに寄り添いながら“希望”を翻訳していく。その過程には、言葉だけでは語り尽くせない情熱と信念がありました。
古後さんの語る言葉を通して、“KANEBOが世界で愛される理由”を感じていただけると思います。
ブランドメッセージ『I HOPE.』に込めた想い

KANEBOは今、“美”ではなく“希望”を発信するブランドとして、新たなフェーズに進んでいます。
スキンケアやメイクアップを通して「こうありたい」という個々の希望を肯定、そして一人ひとりの魅力を引き出し、明るい未来を提示する。それこそが、KANEBOが世界に届けたいことであり、ブランドメッセージ『I HOPE.』に込められた想いです。
この“希望”というキーワードをグローバルに展開していくうえで、同社がまず取り組んだのが「国や地域ごとの希望の形を調べる」というリサーチ。今回のタイでのイベントを実施するにあたり、古後さんはこう振り返ります。

“希望”という言葉にも、国や地域ごとに価値観の違いがあります。
日本では“0から1へ”というように、希望を見出すイメージが強いのに対し、タイではすでに希望が身の回りにあることが前提。
“1から、さらに10、100へ”と、自分の未来をより良く更新していくような、力強いエネルギーに満ちていると感じました。
つまり、日本は、他人の目を気にしたり、固定観念に縛られがちであり、自身の願いを実現するために、壁を乗り越え、内なる力を輝かせることに希望を見いだす傾向があります。
そのため、“マイナスからプラスへ変化すること”を希望と捉える一方、タイでは“プラスから、さらにプラスへと突き抜けていくような上昇志向”を希望と捉えているとのこと。
その違いを肌で感じたことが、今回の『I HOPE.』イベントを構想する原点になったといいます。
国ごとの“希望”を理解したうえで、KANEBOはそれぞれの文化の中にあるポジティブな感情を、どう表現として昇華させるかに挑み続けています。
タイで体現された“HOPE”──大規模イベントの裏側

『I HOPE.』というブランドメッセージを、どうすれば体感として届けられるか。
その挑戦の舞台となったのが、タイ・バンコクです。
KANEBOはここで、ブランドの核である“希望”というキーワードを、「見て、触れて、共鳴する」体験へと昇華。過去最大規模の投資を行い、空間演出から来場者の導線、体験コンテンツまでを総合的に設計した、かつてないブランド体験を実施しました!
このイベント全体を振り返り、古後さんはこう語ります。

正直、ここまで多くの方が来てくださるとは思っていなかったんです!
会場内は想像以上の熱気に包まれていて、クリームのテクスチャを手に取って驚く方、フォトブースで夢中になって写真を撮る方など、思い思いにイベントを楽しむ様子が印象的でした。
本当に楽しそうな表情を見ていると、KANEBOが届けたかったメッセージが、確かに届いたのだと、心の底から実感しました。
現地ターゲット──“自分らしさ”を楽しむヤングミレニアル世代

今回のイベントがターゲットとしたのは、ヤングミレニアル世代(18〜35歳)を中心とする、ファッション感度の高い都市部の男女です。
トレンドへの感度が高く、“美しさ”と同様に“自分らしさ”を大切にする層。自分の個性やスタイルをSNSで自由に発信し、日々のメイクやファッションも流行を取り入れつつも「自分らしさ」で選ぶ世代です。

タイの若い世代は、自分の好きなものを堂々と表現できる人が多いんです。
特に今回のターゲットであるヤングミレニアル世代の男女は、SNSを通して自分らしさを発信することにとても前向き。
だからこそ、KANEBOの“希望”というメッセージが自然に響いたのだと思います。
そんなターゲットに、“希望”をどう体感として届けるか──。
その答えが、今回のバンコクでの大規模イベントに込められていました。
会場演出と体験コンテンツ

会場に選ばれたのは、プレステージブランドが軒を連ねる高級モール「Siam Paragon(サイアム・パラゴン)」に併設される「Parc Paragon(パーク・パラゴン)」。アジアの美容トレンドを牽引する象徴的な場所で、“KANEBOがタイで本格的に始動する”というインパクトを強く放ちました。
さらに会場中央には、新クリームをモチーフにしたドーム型の特設会場を設置。
内部は、トークイベントが行われるステージや商品体験スペースとなっており、“光・音・香り”が融合した空間の中で、来場者が五感で“希望”を感じる時間を過ごせるよう設計されていました。
ーーイベント空間のテーマや設計で『I HOPE.』を表現するためにどのような工夫を行いましたか?

希望は、説明して理解するものではなく感じるもの。
だから、五感で楽しみながら自然と伝わるような仕掛けを詰め込みました。
たとえば、会場内にはいくつものアクティビティを用意。
“TAISHI(胎脂)”の成分やコンセプトをクイズ形式で学べる〈Taishi Quest〉や、オリジナル写真が撮影できる〈Digital Photo Booth〉。さらには、希望をキャッチするように景品をすくい上げる〈Gift Catcher(UFOキャッチャー)〉など、体験を通じて『I HOPE.』の世界観を自分の手で掴めるように構成しました。
ーーすごい!来場者が自分で動いて、見て、触れて、感じられるイベントなのですね!

はい!各ブースを巡るとスタンプが貯まり、すべて集めるとクレーンゲームに参加できる仕組みにしました。
遊びながら自然とKANEBOのメッセージに触れられるようにしたことで、“体験の中でブランドを理解する”という狙いが実現できたと思います。
さらに、新クリームの購入者には特典として、KANEBO スキンケアの香り“Teatopia”をテーマにしたオリジナルドリンクも提供しました。
来場者の方々にも大人気で、みなさん写真を撮ったり、“かわいい!”って声を上げてくれたり。会場全体が温かく、一体感に包まれた空間だったと思います。
会場には、アジア各地からKOLも多数来場。
それぞれがSNSを通じてイベントの様子を発信し、世界中のファンがリアルタイムで“HOPE”を感じ取るきっかけとなったとのこと。
さらに、会場を訪れた来場者からは、さまざまな感動の声が寄せられました。
来場者の声
「クイズ形式で飽きることなく、楽しみながら商品について知ることができました。時間も長すぎず、ちょうど良かったです!」
「開発の背景を知れて感動しました。実際の成分に触れながら、研究の成果を肌で実感できました!」
「日本の研究者の方と直接お話しできて、特別な体験でした。」
「すべすべで、もっちりした赤ちゃんのような肌になれるクリームに夢中になりました!」
体験を通してブランドの世界観を自分の手で感じ取る時間は、来場者一人ひとりの感性に寄り添う、特別なひとときになっていたようです。
イベント後の反響──SNSと売上に現れた“希望”の共鳴
イベント開催後、SNSでは来場者による投稿が急増。
会場のフォトスポットや新クリームの写真が拡散され、「今、KANEBOきてるよね!」「イベントのコンテンツが素晴らしかった」といった声が相次ぎました。
その熱量は、売上という形でも明確に表れました。イベント期間中、タイ国内の全店舗売上は前年比2倍以上、新規顧客数も4倍以上を記録。
中でも会場となったSiam Paragonでは、売上、新規顧客数ともに前年比9倍以上を達成したとのこと!

“希望”という言葉を掲げても、体験が伴わなければ伝わらない。
でも今回は、来場者の表情やSNSの反応、そして実際の売上の結果を見て、“KANEBOのメッセージがちゃんと届いた”と実感しました!
さらに、タイでの成功は日本にも確かな波及効果をもたらしました。
イベント当日の様子が公式SNSで拡散されると、日本のファンからも「KANEBO神!」「クリームを早く手に入れたい!」といったコメントが続出したとのこと。
海外でのブランド体験が、日本国内でも再び注目を集めるきっかけへ。
現地の熱気がSNSを通じて世界中へ広がり、改めて“KANEBOは日本発のグローバルブランド”であることを印象づける結果となりました。
多様性を象徴するキャスティング戦略

『I HOPE.』のメッセージを伝えるうえで、もうひとつ大切にしたのが“誰が伝えるか”という視点でした。
同社は、ブランドの象徴としてタイで人気の俳優・アーティストであるDAOU PITTAYA(ターウー・ピタヤ)氏とOFFROAD KANTAPON(オフロード・ガンタポン)氏を起用。
そのキャスティング戦略について、古後さんに詳しくお伺いしました。
DAOU PITTAYA氏・OFFROAD KANTAPON氏起用の理由
ーーなぜ、DAOU PITTAYA氏とOFFROAD KANTAPON氏を起用したのですか?

KANEBOというブランドメッセージである『希望』を“説明する人”ではなく、“体現している人”にお願いしたかったんです。
DAOU氏は、タイで俳優として活躍する一方で、ジェンダーや個性の表現にも真摯に取り組むアーティスト。OFFROAD氏もまた、俳優・モデル・アーティストとして多面的に活動し、SNSではファッションや価値観を自由に発信しています。
タイは“多様性”が自然に受け入れられている国。
だからこそ、性や表現の枠にとらわれず、自分をまっすぐに表現できる方を選びました。
“誰もが自分のHOPEを持っていい”というメッセージを、彼ら自身の存在を通して伝えたかったんです。
実際にこの二人の起用が発表されたときの反響は、想像以上に大きなものだったとのこと。
彼らはタイ国内のみならず日本にも多くのファンを持つ存在で、SNSでも話題が拡散。実際に、筆者の周囲でも「KANEBOが彼らを起用した」と聞いて驚いたという声が上がるほどでした
ブランドの発信をきっかけに、言語や国境を超えて“希望”というメッセージが共鳴されていく。それこそが、KANEBOがこの2人を選んだ意義を裏付ける瞬間だったように思います。
イベントで生まれた“希望の瞬間”
イベントでは、OFFROAD氏によるスペシャルライブも開催されました。
朝早くから100名を超えるファンが列をなし、300名以上の方が来場したとのこと。中には日本や欧米から駆けつけたファンの姿も。
会場は歓声と熱気に包まれ、まさに“希望”が空間を満たしていくような時間になったと語ってくれました。
ーーOFFROAD氏のスペシャルライブはいかがでしたか?

彼らがステージに立った瞬間、会場中が一斉に歓声に包まれました。
その光景はまるで“希望”そのものが形になったようで、歓声や笑顔が入り混じる中で、誰もが“誰かを応援する気持ち”を共有していたと思います。
ーー素敵ですね!他にもイベント時の印象的なエピソードがありましたら教えてください。

当日は大雨で、スペシャルライブの前に奇跡的に雨がやみ、とても神秘的でした。
気温が高い中、長時間並ぶファンを見た現地スタッフが、体調を心配してミネラルウォーターを配布したんです。
その行動がSNSで拡散され、“日本ブランドの思いやり”として話題になりました。
イベントを作り上げるのは出演者だけではありません。
それを支える現地チーム、そして来てくださるお客さまの想い――
そのすべてが“HOPE”だと思っています。
KANEBOが放つ“HOPE”の象徴──「TAISHI(胎脂)」の知恵から生まれた新クリーム

今回のイベントは、KANEBOが掲げる“HOPE”というメッセージを体感できる場であると同時に、そのエネルギーを象徴する新クリームの発表の場でもありました。
KANEBOが打ち出す“希望のエネルギー”をプロダクトとして形にしたのが、刷新された「クリーム イン デイⅡ」と「クリーム イン ナイトⅡ」です。
その開発コンセプトの中心にあるのが、“胎脂(たいし)”という言葉。

“胎脂”とは、おなかの中の赤ちゃんの肌を覆っているクリーム状の脂のこと。
出生時にさらされる環境の変化から肌を守るために、お母さんのおなかで眠っている間につくられる「胎脂」は、羊水の中では肌がふやけるのを防ぎ、空気中では乾燥から守る機能を持つ天然のバリアなんです。
その“生命の知恵”に、KANEBOは“希望”を見出しました。
そして、この新クリームには、“胎脂(たいし)”という赤ちゃんを包む生命の膜の意味と、“大志(たいし)”という人生を切り開く力強い希望の意味を掛け合わせ、「化粧品よ、TAISHI(大志)を抱け。」というコピーに想いを込めました。
“胎脂”という、人類の誰もが持って生まれる保護膜をヒントに誕生した新クリーム。
外的環境に負けず、肌本来の力を引き出していくその設計は、“生命の力=希望”を肌で感じられるような存在です。
KANEBOが世界に向けて放つ“HOPE”のエネルギーを、日常のスキンケアへと落とし込んだアイテム。使うたびに、自分の中の“希望”を思い出させてくれるような存在かもしれません。
商品の詳しい説明や実際の使用感は以下の記事をぜひ参考にしてください。

アジアを起点に、グローバルで希望をつなぐ
『I HOPE.』を掲げたKANEBOの挑戦は、タイだけにとどまりません。今後はアジアを中心に、世界各国へと“希望”を広げていくフェーズへ。その第一歩として、今回のタイでの成功は大きな意味を持ちました。
ーー花王の中で、KANEBOはどのようなポジションにあるブランドなのでしょうか?

花王の6ブランドの中でも、KANEBOは“アジア発信の旗手”としての役割を担っています。
文化も宗教も価値観も違う国々の中で、“希望”という共通言語をどう伝えるか。その挑戦は始まったばかりです。
ーーとてもワクワクする挑戦ですね!その挑戦の中ではどのようなことを大切にしていますか?

KANEBOのグローバル展開では、各地の文化に合わせて表現をローカライズしながらも、コアとなるメッセージ『I HOPE.』は決して揺らがせないことを大切にしています。
そのために、今回のタイのように、各地のチームがそれぞれの視点で『I HOPE.』を翻訳していくんです。
文化や価値観によってアプローチは変えても、伝えたい根っこは同じ。『I HOPE.』という中心があるからこそ、世界に広がっていけると思っています!
“ローカライズ”という柔軟さと、“ブランディングの一貫性”という軸の強さ。
その両方を併せ持つからこそ、KANEBOの“希望”は国や文化を越えて伝わっていくのだと感じました。
担当者が語る『I HOPE.』──「違いを、希望に変える」
タイでのイベントを通して、KANEBOの“希望”というメッセージは、国や文化を超えて多くの人々の心に届きました。
会場の熱気、SNSで広がる反響、そして現地スタッフや来場者が見せてくれた思いやりの行動ーー
その一つひとつが、“希望”が人から人へ受け継がれていくことを証明していたように感じます。
ーー『I HOPE.』というメッセージを世界に届けていくうえで、古後さんが大切にされていることを教えてください。

海外ブランドの担当として、日本のブランドを世界に届けていく使命を感じています。
その中で常に意識しているのは、“多様性”という言葉です。
国を超え、文化を超え、宗教を超えてブランドを発信することは決して簡単ではありません。
でもその先に、“違いを認め合える世界”があると信じています。
たとえば、イスラムの方々にはハラルや肌の露出など、文化的な配慮が必要です。
でもそれを“違い”として線を引くのではなく、“その人らしさ”として尊重する。
『みんなが違って、それでいい』
ーーそんなふうに“違いを希望に変える”瞬間を、これからも増やしていきたいんです。
KANEBOが掲げる『I HOPE.』は、単なる広告メッセージではありません。
人と人をつなぐ“希望の共通言語”として、文化も、信念も、価値観も異なる世界の人たちが、それぞれの“HOPE”を持って生きていけるようにという願いが込められているのだと感じました。
古後さんが「今、一番おすすめしたい」KANEBOのアイテム
最後に編集部より、古後さんが「今、一番おすすめしたい」KANEBOのアイテムを伺いました。

私が今おすすめしたいアイテムは、10月31日に情報解禁となった新化粧水「ジェネレイティング エッセンシャルズ」です!
使うたびに、うるおいが肌のすみずみまで届いて、なめらかに整っていく感じがあるんです。
胎脂に着想を得た擬似胎脂成分を、微細化することで初めて化粧水に配合。まさに“成長”を意味するプログレス発想の化粧水。
乾燥って、肌にとって本当に大きなストレスなんですよね。
この化粧水を使っていると、“乾燥しないってこんなに肌にいいことなんだ”って実感できるような、そんなアイテムです。
新作について語る古後さんの表情は、とても嬉しそう。
その姿からも、KANEBOが大切にしている“希望を届けるものづくり”への想いが伝わってきました。
乾燥が気になり始めるこれからの季節、「肌をしっとり保ちたい」「うるおいで満たされたい」方は、ぜひチェックしてみてください!
編集部あとがき
今回の取材を通して『I HOPE.』というメッセージに触れ、改めてKANEBOというブランドの奥深さを実感。“美しさ”を追求するだけでなく、人の心に寄り添い、前を向く力をそっとくれるブランドだったのだと再認識しました。
筆者が初めて“KANEBO”を意識したのは、母のドレッサーの上。
上品で洗練されたパッケージが並んでいて、どこか“特別なもの”という印象を持っていました。
そんなKANEBOが今は、“希望”というメッセージを掲げて世界中の人の心に寄り添い、希望を届けるブランドへと進化している——その姿に、長く愛され続ける理由を実感しました。
『I HOPE.』というシンプルで力強い一言。このメッセージに込められた想いを知り、筆者自身もそっと背中を押されたような気持ちになりました。
きっとこの先も、KANEBOの製品や言葉に触れるたびに、ふと背筋が伸びて、「今日も希望を持って生きてみよう」と思える。
そんな小さな勇気を、何度でも思い出させてくれるブランドだと感じています!


